「でも、でも、真宵さま。冴霧様はああ見えて天利様に並ぶほどの大神様ですし、真宵さまのお力は必要ないのではないですか?」
「そうだね。私がいなくたって穢れがたまれば眠れば良いだけだもん。神様にとっては千年なんてお昼寝くらいの感覚みたいだし」
真宵と契った神の利点はただひとつ。
──魂を介して無条件に穢れを祓い、清め続けられることだ。
これにより神は眠る必要がなくなる。どんなに穢れを負ってもすぐさま祓われるため、穢れによる迫害を気にすることなく力を振るうことが可能になる。
神々にとっては喉から手が出るほど欲しいものだろう。とりわけ眠っている間に存在が消えるリスクが高い──力の弱い、信仰の薄い神ほど真宵を欲する。
だが冴霧ほどの大神にとっては、この程度大したキャプションではない。
「なら、なぜ天利様は冴霧様を許嫁に……?」
「ね、わからないでしょう。私もさっぱりわからない」
契りを交わさずとも『儀式』は出来る。
けれど神が負う穢れは重く、儀式は必ず本式でなければならない。霊力消費の激しいそれを、何度も行うのは不可能だ。
だから天利は、自分も含め、絶対に神々へこの力を使わせなかった。
(……今となっては、使ったら死ぬらしいしね)
なんでも真宵の体は、霊力を使い過ぎるとだめになるのだとか。実際にこの危機に襲われるまでまさかそんな冗談と思っていたけれど、どうやら本当らしい。
現在進行形で、霊力を消費した後は『死』を予感する。
こうなったのは天利が眠った後からだが、その辺りの事情は説明してもらっていないので原因は不明。ああもう、本当にわからないことばかりで嫌になる。
まあ、それゆえに神々には【魂の契り】という選択しか残されていないのだ。
ただ、それだけ。
その為だけに、数多くの神々が真宵を堕とそうと決死になっている……らしい。