「それに、セッちゃんや蒼ちゃん、白火もいますしね」
「──ああ、そうだな。あいつらは確かに俺たちの味方だ」
ふ、と冴霧の笑う気配がした。
「真宵」
背中に回っていた腕が緩んで顔を覗き込まれる。
嬉しそうな、それでいて泣きそうな表情だ。
自分でも、今そんな表情をしていることなど気づいていないのだろう。
基本的にポーカーフェイスを崩さない冴霧にしては珍しい。
「勘違いすんなよ。今日なんもしねえのは蒼爾の言ってた通り満身創痍だからだ。俺は神力が、真宵は霊力が尽きかけてる。いくら契りを結んだからって一度なくなったもんはすぐに戻らねえ。今は何より休んで回復することが優先だからな」
「……はい」
「いつか俺もおまえも十分に回復した際には、存分に愛してやるから」
「え!? いや、そ、それはまだ、ご、ご遠慮願いたいと言いますか」
はあ?と冴霧は不機嫌そうに身体を起こす。
まさかここで拒否られるとは思っていなかったのだろう。
だけど、そう、だって、まだそっちの覚悟はない。
「おまえ……さっきは自分から口づけしてきたくせに!」
「そっ、それとこれとは話が違いますっ!」
「なにが違うんだよ!」
「全てですっ! す、べ、て!」
ぐう、と冴霧が喉を詰まらせ、恨めしそうに真宵の上に覆い被さってくる。
「あぁそうかよ。だが俺はもう遠慮をしないと決めたからな。なにがなんでも俺はおまえのすべてを奪い取るぞ。覚悟しとけ!」
「お、お、お……」
「あぁ? お?」
「──お断りしますーーー!!!!!!」
真宵の渾身の絶叫が響き渡り、冴霧が耳を押さえてひっくり返った。
夫婦になっても変わらない。
たとえ目には見えなくても、神様と人の子の妖しく不思議な縁は、これからも途切れることなく悠久の時を続いてゆく。
「ふっざけんなよ、真宵ぃぃぃぃぃっ!」
だけどまあ、ふたりの結婚生活は前途多難の予感──である。