「真宵と向き合うってのも考えなかったわけじゃねえ。でもどんなに考えても、隠し通す以外におまえを守れる方法が浮かばなかった。打ち明けた先で真宵が傷つく未来しか見えなくて、んなのやっぱ耐えられねえって、逃げたんだよ」

 冴霧の手が真宵の髪を梳く。

 体の半分以上を覆っていた長い髪は、今はもう半分ほどしかない。

 ふと冴霧の好みが気になった。

 ロングなのかショートなのか。

「……冴霧様は、この髪型、嫌いですか?」

 少し心配になって、話の途中にも関わらず割り込んでみる。

 冴霧はとくに気にする様子もなく、むしろなに言ってんだとばかりにきょとんとした。

「嫌いなわけあるかよ。俺は長かろうが短かろうが真宵ならなんでも好きだ。どうせおまえはどんな髪型をしたって似合う」

「……ええ~」

「なんだよ、不服そうだな」

 そこはどの長さが好きとか言ってくれた方が、髪型の参考になるというもので。

 しかし一方で、どの髪型にしても嫌われないとわかって浮足立つ自分もいる。

(これぞ複雑な乙女心ってやつ……)

 だいたい不意打ちの口づけはあんなに真っ赤になるくせに、なぜこういう歯の浮くような台詞は平気な顔で言えてしまうのか。

 もしや口説いている自覚がない?

「冴霧様って、やっぱりずるいですよね……」

「あ?」

「気持ちが通じ合った後だと、なんだか余計に愛されてる感じがして、正直とてつもなく恥ずかしいです。照れます。自惚れちゃいます」

「はは、なんだそれ。良いじゃねえか、自惚れれば」

 くしゃりと頭を撫でられる。

 こういうひとつひとつの仕草に胸を撃ち鳴らしてしまうのは、惚れた代償だろうか。自惚れるどころかいっそ恥ずかし死しそうだ。

 うぅと唸っていると、冴霧は「そういうとこがな」と苦笑いを浮かべる。