全身が眩い光に包みこまれた瞬間、冴霧は体内から抑え込んでいた穢れが無理やり吐き出されていく感覚に襲われた。
交錯するのは、内臓ごとひっくり返されているような不快さと、凍りついていた心が陽だまりに溶かされていくような心地良さ。
身体から力が抜けて、思わず呻き声を上げながらその場に膝をつく。しかしほんの僅かに残された理性が、かろうじて意識を飛ばす事を妨げていた。
なぜならば。
「私は冴霧様が好きです」
辺り一面に己の霊力を張り巡らせ、自分と冴霧を中心にした陣──結界をはっているのは真宵だ。
そんな真宵の口から零れた言葉は一度、強い焦燥に掻き消される。
まずい。やめろ。やめてくれ。
心がそう叫んでいるのに体は思うように動かない。穢れに侵食され過ぎた。
もはや手遅れと言っても過言ではない。
にも関わらず、真宵が半ば無理やり穢れを祓いにかかってきたせいで、皮肉にも寸前で神墜ちまでは到達していない。
「私はこの世界の誰よりも冴霧様を愛しています」
どくん、と心臓がより強く波打った。
今度こそ真宵の言葉が冴霧の元へ届く。
だが同時に、まるで直に殴りつけられるように霊力の塊をぶつけられて大きな衝撃が走った。
今度こそ意識がぶっ飛ぶ。
一瞬か、一秒か、数分か。
時の流れは感じられなかった。
けれど遠くで真宵の声が聞こえたような気がして、完全に沈みかけていた意識が浮上した。
朦朧としながらも、その声の糸を辿る。
(真、宵……?)