「関係ねーだろ、テメェには」

「抜かせ。ここまで付き合ってやったのは誰のためだと思ってる」

「そりゃあ大事な大事な旧友のため、だろうけどな? それとこれとは話が別だろ。こればっかりは、いくら翡翠でも口出しされたくねえな」

 真宵はもう鬼たちと再会しただろうか。

 真宵に危害を加えないだろうと、偏見と独断で選別した見合い相手の写真でも見ているかもしれない。

 そう考えただけでも腸が煮えくり返りそうだが、悲しいかな、自ら決めたことだ。

 今さら何を思っても仕方がない。

「っ、はあ。なぜそう不器用なんだ。自分が消えることにどうしてそこまで躊躇いがない? おまえが消えて、どうして真宵嬢が幸せになると思う?」

「んな先のことなんて考えらんねえよ。あいつは幸せにならなきゃならないんだ。俺はそのためだけに、この十九年間、全てを捧げてきたんだからな」

「それは彼女に救われたからだろう。だが彼女を救ったのも──いや、救ってしまったのも、冴霧。おまえなんだ。天利様が眠った今、その責任を取れるのは冴霧しかいないんだぞ。わかっているのか?」

 ああうるさい、小姑かよ、とうんざりしながら冴霧は再び歩き出す。

「あいつが『生きてる』なら、それが全責任の証だろうよ」

「……腹が立つな。今のおまえはまるで昔の──真宵嬢に出会う前の冴霧そのものだ。何もかも投げやりで心を、生を捨てた動く屍……さながら生き人形の如くな」

「ハッ、ずいぶんな言い様だなぁ? 良いじゃねえか、生き人形。これからする仕事はそんくらい心がねえ状態の方が向いてるだろ」

 答えながら、冴霧は昔のことを思い出す。

「……やっぱりこの方がラクだな。なんも考えねえで淡々と、それこそ人形同然に仕事をこなすんだ。俺みたいなのはこっちの方がお似合いなんだよ」