「……使い様、見様によってはこの世の何よりも重い刑罰になります。ゆえに流獄泉などの罰では手に負えないような相手には、主が駆り出されるのです」
「それが主はんの『お仕事』なんやよ。お嬢」
赤羅と蒼爾の顔は自分の事ではないのにも関わらず、悲痛に歪んでいた。
その表情だけでも、相当な負担がある仕事だと分かる。
一見暴君そうに見えて、本当は誰よりも優しい心を持っている彼が──そんな残忍で残酷な仕事をやらされているなんて、想像もしたことがなかった。
「そしてお嬢。あなたは天神会で『保護』されている存在です」
「……え?」
「あなたは稀代の【清めの巫女】だ。言い方はよくありませんが、高天原の宝そのものなのです。ゆえにこそ、あなたに手を出そうとした輩には厳しい罰則が下される決まりがあります。正式な法の元でね」
主の私怨ではないことだけ留めておいてください。
蒼爾は最後に言い添えながら、真宵の頭に掌を滑らせる。
「主に仕える私たちも、これらの仕事に長く手を染めています。本当はこんなふうに触れることすら許されないほど穢れきっているのですよ」
「蒼、ちゃん」
「主があなたに入れ込む理由もわかります。ねえ、赤羅」
赤羅が泣き笑いのような面持ちで恭しく頷く。
「ほんまにな。怪をここまで墜としこむ人の子なんてお嬢くらいやよ」
「私も赤羅も、お嬢のことは実の妹のように思っていますからね。……そう、だからこそ、あなたに消えてほしくない。ヘタしたら私たちも無に還されかねないことを、こうして雁首差し出す覚悟で話しているのも、全てはその思いからです」
「お嬢は知らないだけやで。全部全部、主はんは執拗に隠し続けてきたからな」
嘘でしょ、と真宵は動揺を隠せないまま喉を震わせた。
神命。
無。
還す。
仕事。
ならば、あの瞳に浮かんでいた絶望は。