そもそも冴霧は、あまり他人と関わろうとしない節がある。

「……それで、お見合いってなに?」

「ああ、せやった。ええとこれな、オレらが挙げた見合い相手の候補ん中から、主はんの厳しい見識を通った連中をまとめたもんや。ちと覗いてみい」

 赤羅が蒼爾が抱えていた紙袋を受け取って、ほいと臆面もなく渡してくる。

 恐々と中を覗き込めば、何十冊もの冊子が入っていた。

 ひとつ取り出して開いてみると、そこにはおたふく顔の幸せそうな神様の笑顔。

 左側には、この神さまのあらゆる情報が事細やかに記されていた。

 なんだこれ。

「言うとくけど、命じられたからしゃーなくやったんやで」

「私たちはお嬢と主が結婚すると信じてますからね」

 否、もう向こうにその気がないから、これを用意させたのではないのだろうか。

(……まあ無理もない、というか、予想通りっていうか)

 愛想を尽かされたという真宵の推測は、どうやら的を射ていたらしい。

 ここまであからさまに拒絶の意を示されると、いっそ清々しいような気もする。

 とはいえ、こんなものを人づてに渡されて「はいわかりました」と素直に他者と結婚すると思われているのは、なんとも、非常に、癪というか。

 真宵は脅しから『結婚しない』と言っていたわけではない。

 第一あれほど熱烈な告白をさせておいて、こんな仕打ちはあんまりではないだろうか。