「し、ししししっと」

「あ? 言っておくが、俺は自他ともに認めるほど嫉妬深い男だぞ」

 左様ですか、と思わず真顔で答えてしまった。

「赤羅のヤツ、あれだけ捨てさせろっつったのに……命令破りやがって」

「せ、セッちゃんは悪くないですよ! 私が気に入ってたから、きっと……」

「気に入ってた? 俺からの贈りもんじゃねえのに?」

 はたして、真宵の中の冴霧とは。

 先ほどから聞いていれば、どうも冴霧は真宵にとってずいぶん評価が高い存在だと勘違いしている節があるようだ。

 確かに誠実さだけはあると思っているし、顔も声もこれ以上ないくらい好みではあるが、それとこれとは話が違う。

 そもそも冴霧は、これまで真宵に贈り物をしてくれたことがあっただろうか?

 いや、ない。

 断じて、ない。

 昔からなにかと世話を焼いてくれてはいるが、贈り物と称して──例えば誕生日なんかに、形に残る物を贈られたことは一度たりともない。

「んだよ、その目は」

「べつに……」

「俺からの贈りもんがそんなに欲しいか?」

「っ、そういうところですよ! そういうところが! 嫌! なんですっ!!」

 いつかの白火みたいになってしまった。

 なるほど、あの子は親に似たのか。

 いざその立場になると、嫌味なものでつくづく気持ちがわかってしまう。

 胸の奥にある名も知らない血管がせき詰まったような、自分ではどうにもならないやるせなさに思わず叫びたくなる。そんな感覚だ。

「あのなぁ、貢ぎモンなんてしようと思えばいくらでも出来るんだよ。でも俺はそういう、あからさまなやり口が嫌いなんだ。愛はもっと、態度で示すべきもんだろう」

「この体勢で態度とはどの口が……」

「あーあーほんっとに減らねぇ口だな。また塞いでやろうか? あ?」

 また、という言葉が引っかかった。


 ──また?

「え……なんですか、その二度目ですよ感」

「二度目だろうが。しただろ、泉の中で。まさか忘れたのか?」