「……鉱麗珠……」

「鉱麗珠だと?」

 芋づる式に浮かんだ言葉をぽつり呟いた真宵に、冴霧の双眸が微かに光る。

「はい、あの、先日鉱麗珠のブレスレットを頂いたんです。かか様のご友人だと名乗る方から。お名前も存じないのですけど」

 ああ、と冴霧はなにか思い当たったのか、細く長い指を思案気に顎へ添えた。

「赤羅から連絡が来てたな。真宵へ情報屋越しにブレスレットを贈った奴がいると」

「あ、それですそれ。なんでも御守りになるらしいので、頂いてからお風呂以外の時はつけてたんですけど、どうしてか泉に反応してて……」

「なるほど。だいたい理解した」

 ところで、と冴霧がなんの脈略もなく話を打ち切り、真宵の上に乗り出してきた。

 覆い被さるように近づいた冴霧の顔。

 目と鼻の先、今にも触れてしまいそうなその距離を数拍遅れて理解した瞬間、全身が燃えるようにカッと熱くなった。

「なっ、なにして……っ」

「いやぁ、な? 俺の未来の嫁がどうにもこうにも危機感がなさすぎてイラッとしたから、ちょっとばかし脅してみようかと」

「や、やっぱり脅すことでしか会話出来ないんですね!? そうでしょう!?」

 しかしそこは『襲う』ではなく『脅す』なのか、と突っ込まずにはいられない。

 なんとも言えない複雑な気持ちになる。

 俺の未来の嫁、なんて、とんでも発言はサラッとするくせに、そういうところは道徳的というか、なんというか。

「なぜ俺という存在がいながら、他の男からの貢ぎ物をそう易々と身につける? どんだけ嫉妬させたら気が済むんだよ、なぁ」