緩みそうになる顔を引きしめていると、冴霧は本当に自ら布団を敷き始めた。

 敷布団にシーツ、羽毛布団や枕のカバーまで。

 手つきが慣れているだけでなく、装着するシーツには皺ひとつない器用さだ。

 あまりの手際の良さに驚いて、本当に全て自分でやっているのだなと思わず感心してしまう。

「あの、冴霧様。ここは、その、なんの部屋なのでしょう?」

 布団を敷き終わり、ひょいっと抱え上げられたタイミングで言及する。

「なんのって……そりゃ、真宵の部屋だろ」

「客室ですか」

「違えよ。元から真宵のために用意してた部屋だ。家具やらなんやらは好みがあるだろうから、最低限だがな。心配しなくても今度好きなもんを仕入れてやるから」

「いや、あの、そうではなくてですね……っ」

「おーおーわかったから落ち着け」

 宥めるように言いながら、今しがた敷いたばかりの布団に下ろされた。

 そのままゆっくりと肩を押され、否応なく褥の上に寝かされる。

「真宵。おまえな、呑気な顔してねえで自分が死にかけって自覚しろよ?」

 寝ろ、と冴霧は乱暴な口調に似合わず、優しく首元まで布団を被せてくれる。

「俺の部屋は隣の隣の隣だ。なんかあったら叫べ」

「その……なんか微妙に離れてる感じは、なにか意味が……?」

「あ? 気遣いに決まってんだろ。夜な夜な襲われたいのか?」

「っ! いいえ! まったくそのようなことは! あああ、もうすみませんありがたいお気遣い感謝します、でも本当に余計なことを聞きました!」

 両腕で発火する顔を覆い、今度こそ身悶える。

 冴霧が見た目に反して誠実な男だと知っているとはいえ、些か同じ屋根の下で暮らすのは……うん、宜しくないのではないだろうか。