かろうじて言ったお礼も、どこかから借りてきたかのように棒読みだ。私なんかにこんなことをしてもらっていいのだろうかと、うろたえてしまう。
「頑張ろう、荘原さん」
「勝とうね! 今日」
 いつも私がみんなにかけている声を、今日は逆にかけられる。緊張が増して、足元がおぼつかなくなりそうだ。
練習はわずかな期間しかしていないし、うまくできないことのほうが多すぎて、邪魔をしないことで精いっぱいだろう。ましてや、前回の練習試合のこともあるし……。
「……うん」
 ネガティブなほうへ考えようと思えば、いくらでも考えられる。私は、その気持ちを振り切るようにリストバンドをその場で手首に装着して見せ、ふたりに、
「頑張る!」
 と、笑顔を向けたのだった。

 試合は、1度負けると敗退のトーナメント形式。1回戦では運よくそこまで強くないところと当たり、北見さんと根津さんの強さもあって、こちらのリードで試合が進んだ。
 今までマネージャーとして観察してきたこと、そして1週間同じコートで練習したことが合わさったからだろうか、みんなの動きがよく見える。相手校のリサーチもしていたから、ディフェンスの穴もわかっており、先輩から教わったフェイクを入れて低いドリブルでかわしては、仲間にパスを繰り返した。
 4人ともみんな、本当に集中していた。とくに北見さんと根津さんは目の色が違う。ひとつひとつの動作を忠実に、丁寧にこなし、得点へとつないでいく。練習の成果を、バスケへの情熱を、惜しみなく披露していた。
 タイムアウトでは、先生が「いけるよ!」と声を上げる。そして、
「荘原さん、その調子!」
 と言われ、笑顔で背中を叩かれた。
 根津さんから、かなり速いパスが回ってきたのは、後半に入ってからだった。
「あ」
受け取った私の周りには、ちょうどガードがいなくて、ここからならレイアップシュートが決まりそうな距離。
 迷っている暇はなかった。短い期間だったけれど、部活でも何度も練習したし、昨日九条先輩からも教わったんだ。気を付けないといけないのは、手からボールを離すときの力の感覚。手首に力を入れすぎず、こうやって……。
「やった!」
 北見さんの声が先に聞こえたあとで、シュッとボールがネットを擦る音。続いて、わっと大きな歓声が響いた。
「え……」
 入った。……入ったのだ。ボールが、ネットに。
「やっ……」