その森には、小さなお店がありました。
エダツノ屋といって、シカのおばさんと息子二人がやっています。
木の枝で飾られた看板が目印。
町で仕入れた食べ物と日用品、農場から仕入れた野菜を、森のみんなに売っています。
町へ商品を買いに行くのは、息子達の仕事です。
ある日のお昼前、弟シカが荷物をいっぱい積んだ荷車を引いて、戻ってきました。
おばさんは、弟シカに温かいスープを出してやりました。
その間に、兄さんシカが荷物を店へ運び入れます。
弟シカを台所に残して、おばさんも兄さんシカを手伝います。
おばさんは、荷物の中に見慣れない袋をみつけました。
白い半透明のツルツルした袋で、くるりと紙に包まれた小さなものが、いくつも入っています。
「これはどうしたの?」
おばさんは袋を一つ持って台所に戻ると、弟シカにそう聞きました。
鍋の前に立った弟シカは、自分でスープのお代わりを注ぎながら、答えました。
「キャンディだよ。ミルクとハチミツの。菓子屋の牛さんがオススメだって。」
牛さんは、町一番のお菓子職人です。
その牛さんのオススメなら、とってもおいしいキャンディに間違いありません。
おばさんは、店に戻ってぐるっと棚を見渡しました。
森にはいろんな動物がいます。
大きい動物がよく買うものは、棚の上の方に置いています。
小さい動物や、子どもがよく買うものは、棚の下の方に置いています。
おばさんは、子ども達が取りやすいように、キャンディを下の方へ並べることにしました。