そうして、響さんはその人との出会いを話してくれた。
 お相手の名前は、白州さん。出会いは、ゴールデンウィーク中に訪れた、陶芸市だったそうだ。

「バーで出す器に凝りたいって思ったのよね。そこで、車で行ける範囲の陶芸市を調べたの。おむすびなら知ってるかしら、茨城県の笠間市ってとこだったんだけど」
「もしかして、笠間の陶炎祭(ひまつり)ですか? 陶芸美術館の敷地内でやっている」
「そうそう、そのイベントよ。初めて行ったんだけど、たくさんの陶芸作家さんが店を出しているのね。直売会って感じの雰囲気かしら。お客さんもいっぱいでびっくりしちゃった」

 そこでお店をかまえていたのが、陶芸作家の白州さんだった。並べてあった器が気に入った響さんだけど、その場にあるものだけではお店で使うには数が足りなかった。

 事情を話すと、注文を受け付けてくれて、気に入った器やグラスを数セットずつ注文したそうだ。

「作務衣姿で、頭に手ぬぐいを巻いていて。物静かで口数も多くなくて、いかにも陶芸家って感じの雰囲気なんだけど、物腰や話し方が穏やかで優しくてね。あたしのお願いもこころよく聞いてくれたの」

 受注生産なので、できあがるまでに日数がかかる。郵送もできるけれど、割れ物ということで直接白州さんのアトリエまで受け取りに行ったらしい。それが、先日のこと。

「郵送だと心配だったのはもちろんだったけど、それ以上に『もう一度会いたい』って思ったのよね。陶炎祭(ひまつり)のときに、話していると落ち着くなって感じたの。もっとこの人のことを知りたいって。初対面でそんな気持ちになったのなんて初めてだから、あたしも驚いちゃって」

 そういえば、私も初めて一心さんに会ったときがそうだったな、と思い出す。いやいや、今は私のことはどうでもいい。響さんの話に集中しなければ。