「おまちどおさま」
そう告げてカウンターテーブルに置かれたのは、彩りも秋らしい定食だった。
「うわあ、おいしそう!」
栗ご飯、豚汁、筑前煮。小鉢には、ナスの漬物とサツマイモの煮物。もう、見た目だけで『秋が来た!』という感じ。去年のお月見定食とはまた違って楽しい。
「もう少し旬になったら焼きサンマの定食も加えようと思っているから、こちらは野菜メインにしてみた。あとは、はらこ飯もだな」
鮭をご飯と一緒に炊き込んでイクラをのせたはらこ飯は、去年も秋限定メニューで出して好評だったものだ。一心さんのお父さんの故郷である宮城県の郷土料理で、一心さんの思い出の味でもある。
「すっかり、秋の定番メニューですね」
「ああ。……おやっさんも、おむすびと同じもので大丈夫だったか?」
「もちろんだよ。おいしそうだ」
一心さんがやや緊張した表情でたずね、おやっさんから返ってきた返事を聞いてホッと表情をゆるめていた。
そうか、おやっさんは、一心さんのお父さんとはまた違った意味で『師匠』なんだ。もと寿司職人で食堂を開いたという経歴も同じだし、いつまでたってもおやっさんの反応は気になるんだろうな。
「では、いただきます」
ふたりで手を合わせ、同時に箸を伸ばす。まず栗ご飯をいただくと、砂糖では出せないほっこりした甘みを感じる。そして、コクのしみこんだお米のおいしさ。
筑前煮も甘さとしょっぱさのバランスがちょうどよく、上品な薄味なので栗ご飯と合う。逆に、ナスの漬物とサツマイモの煮物ははっきりした酸味と甘みで、箸休めにちょうどいい。そして、それを全部包み込む、まろやかな豚汁。
「ごちそうさまでした」
おやっさんとの会話もそこそこに夢中で食べ進めてしまったが、隣を見るとおやっさんもほぼ同時に食べ終わったみたいだ。
冷房にあたったから今度はあったかい緑茶を、と思って淹れていると、片付けが一段落したらしい一心さんが様子を見に来た。
そう告げてカウンターテーブルに置かれたのは、彩りも秋らしい定食だった。
「うわあ、おいしそう!」
栗ご飯、豚汁、筑前煮。小鉢には、ナスの漬物とサツマイモの煮物。もう、見た目だけで『秋が来た!』という感じ。去年のお月見定食とはまた違って楽しい。
「もう少し旬になったら焼きサンマの定食も加えようと思っているから、こちらは野菜メインにしてみた。あとは、はらこ飯もだな」
鮭をご飯と一緒に炊き込んでイクラをのせたはらこ飯は、去年も秋限定メニューで出して好評だったものだ。一心さんのお父さんの故郷である宮城県の郷土料理で、一心さんの思い出の味でもある。
「すっかり、秋の定番メニューですね」
「ああ。……おやっさんも、おむすびと同じもので大丈夫だったか?」
「もちろんだよ。おいしそうだ」
一心さんがやや緊張した表情でたずね、おやっさんから返ってきた返事を聞いてホッと表情をゆるめていた。
そうか、おやっさんは、一心さんのお父さんとはまた違った意味で『師匠』なんだ。もと寿司職人で食堂を開いたという経歴も同じだし、いつまでたってもおやっさんの反応は気になるんだろうな。
「では、いただきます」
ふたりで手を合わせ、同時に箸を伸ばす。まず栗ご飯をいただくと、砂糖では出せないほっこりした甘みを感じる。そして、コクのしみこんだお米のおいしさ。
筑前煮も甘さとしょっぱさのバランスがちょうどよく、上品な薄味なので栗ご飯と合う。逆に、ナスの漬物とサツマイモの煮物ははっきりした酸味と甘みで、箸休めにちょうどいい。そして、それを全部包み込む、まろやかな豚汁。
「ごちそうさまでした」
おやっさんとの会話もそこそこに夢中で食べ進めてしまったが、隣を見るとおやっさんもほぼ同時に食べ終わったみたいだ。
冷房にあたったから今度はあったかい緑茶を、と思って淹れていると、片付けが一段落したらしい一心さんが様子を見に来た。