「すごく盛りがいいわね、このカレー屋さん」
母も驚いている。さっき「サービスネ」と言ってトマトスープをくれたし、利益は出ているのか同業者として心配になってしまう。くったくのない明るさとフレンドリーさ、サービスのよさは見習いたいくらいだけども。
「お母さん、どう? バターチキンカレー、見た目はおばあちゃんのカレーと似てる?」
「そうねえ。お母さんも記憶が鮮明なわけじゃないんだけど、色はこんな感じだった気がする」
「じゃあ、食べてみよっか」
ナンをちぎって、鮮やかなオレンジ色をしたカレーにひたひたに浸す。たれないように気をつけて口に運ぶと、バターの甘みとコク、少し遅れてスパイスの香りが舌と鼻先に広がる。カレーの中の大きなチキンをスプーンですくって食べると、ほろほろ柔らかい。
これは、ルーがさらっとしていて具がチキンだけなぶん、普通のカレーよりも大量に食べられそう。ナンを手で食べるという行為も、食欲に拍車をかけている気がする。
母も、片手なのをものともせず黙々と食べている。
「このカレー、おいしいね。味はおばあちゃんのと同じだった?」
「これはこれですごくおいしいけれど、おばあちゃんのカレーとは違うわね。ここまで甘くはなかったし、これを食べて思い出したんだけど、チキンじゃなくて牛肉が入っていた気がする」
「牛肉? 豚肉じゃなくて?」
家庭のカレーといえば豚肉というイメージだったが、確かにビーフカレーというのもある。うちみたいな田舎の農家ではなくて、都会のお金持ちの家で作っていそうだけど。
「そう。普段牛肉ってあまり買わないから、豪華な気がしてうれしかったのよね」
「おばあちゃんがビーフカレー派だったのかな」
「そうだったのかしら。でも、ビーフカレーがはやったのって、もっとあとだった気がするのよね。今はレトルトでもあるけど……」
母の言葉で、ハッとした。それを言ったら、その時代はまだバターチキンカレーなんて日本に入ってきていなかったはず。インドに行ったことのないおばあちゃんが、バターで甘みを出すなんて考えつくだろうか。
結局、おばあちゃんの甘いカレーの正体は判明せず、謎が深まっただけだった。
母も驚いている。さっき「サービスネ」と言ってトマトスープをくれたし、利益は出ているのか同業者として心配になってしまう。くったくのない明るさとフレンドリーさ、サービスのよさは見習いたいくらいだけども。
「お母さん、どう? バターチキンカレー、見た目はおばあちゃんのカレーと似てる?」
「そうねえ。お母さんも記憶が鮮明なわけじゃないんだけど、色はこんな感じだった気がする」
「じゃあ、食べてみよっか」
ナンをちぎって、鮮やかなオレンジ色をしたカレーにひたひたに浸す。たれないように気をつけて口に運ぶと、バターの甘みとコク、少し遅れてスパイスの香りが舌と鼻先に広がる。カレーの中の大きなチキンをスプーンですくって食べると、ほろほろ柔らかい。
これは、ルーがさらっとしていて具がチキンだけなぶん、普通のカレーよりも大量に食べられそう。ナンを手で食べるという行為も、食欲に拍車をかけている気がする。
母も、片手なのをものともせず黙々と食べている。
「このカレー、おいしいね。味はおばあちゃんのと同じだった?」
「これはこれですごくおいしいけれど、おばあちゃんのカレーとは違うわね。ここまで甘くはなかったし、これを食べて思い出したんだけど、チキンじゃなくて牛肉が入っていた気がする」
「牛肉? 豚肉じゃなくて?」
家庭のカレーといえば豚肉というイメージだったが、確かにビーフカレーというのもある。うちみたいな田舎の農家ではなくて、都会のお金持ちの家で作っていそうだけど。
「そう。普段牛肉ってあまり買わないから、豪華な気がしてうれしかったのよね」
「おばあちゃんがビーフカレー派だったのかな」
「そうだったのかしら。でも、ビーフカレーがはやったのって、もっとあとだった気がするのよね。今はレトルトでもあるけど……」
母の言葉で、ハッとした。それを言ったら、その時代はまだバターチキンカレーなんて日本に入ってきていなかったはず。インドに行ったことのないおばあちゃんが、バターで甘みを出すなんて考えつくだろうか。
結局、おばあちゃんの甘いカレーの正体は判明せず、謎が深まっただけだった。