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――それから数週間が過ぎ、十二月半ば。世間ではクリスマスの話題で溢れかえっていた。
「二学期の期末テストも終わったし、やれやれって感じだね―」
「……うん。っていうか、さやかちゃんってそればっかりだよね」
ある日の放課後、テストの緊張感から解放されたさやかが教室の席で伸びをしていると、それを聞いた愛美が吹き出した。
ちなみに、短縮授業期間に入っているので、学校は午前で終わり。解放感に満ち溢れているのは何もさやかや愛美だけではない。
「まあねー。でも、今回は結構よかったんだ、テストの結果。珠莉も前回より順位上がってたみたい。愛美はいいなー、いっつも成績上位で」
「それは……、援助してもらって進学した身だし。成績悪いと叔父さまをガッカリさせちゃうから。最悪、愛想尽かされて援助打ち切られちゃうかもしれないもん」
もちろん、中学の頃の愛美は成績がよかったけれど。高校の授業は中学時代よりも難しくて、ついていくのは簡単なことじゃない。それでも成績上位をキープできているのは、「おじさまをガッカリさせたくない」と愛美が必死に努力しているからなのだ。
「愛美の考えすぎなんじゃないの? 本人からそう言われたワケでもないんでしょ? もっと肩の力抜いたらどう?」
「うん……」
確かに、それはあくまでも愛美の勝手な想像でしかない。「成績が悪いと援助が打ち切られる」というのは、杞憂なのかもしれない。
でも……、愛美は〝あしながおじさん〟という人のことをまだよく知らないのだ。ある日突然、手のひらを返したように冷たく突き放されてしまう可能性だってないとも限らない。
(……わたし、まだおじさまのこと信用できてないのかな……?)
彼女にとっては、たった一人の保護者なのに。信用できないなんて心細すぎる。