「結果は一月になるんだって」

 ――寮に帰る途中、愛美はさやかに文芸部の部長さんから聞いたことを伝えた。

「そっか。楽しみだねー」

「うん……。でもちょっと不安かな。だって、部外の人からの応募って珍しいらしいもん。いつも部活で書いてる人たちに比べたら、わたしなんか素人だよ」

 部長さんも言っていた。「部外の人からの応募はハードルが高いみたいだ」と。だから、結果が貼り出された時、その中に自分の名前があるという光景が想像できないでいるのだ。

「そんなことないよ。文芸部の部員っていったって、プロってワケじゃないっしょ? みんなアンタとおんなじ高校生なんだからさ。文章書くのが好きなのは変わんないじゃん。もっと自信持ちなって」

「……うん、そうだね」

 愛美は頷く。
 この高校に入れることになったのだって、〝あしながおじさん〟が自分の文才を認めてくれたからだった。それを、愛美自身が「自信がない」と言ってしまうと、彼に人を見る目がなかったということになってしまう。
 愛美が自分の文才に自信を持つということはつまり、「〝あしながおじさん〟の目は正しかったんだ」と肯定(こうてい)することになるわけで。

(こうして目をかけてもらった以上、ちゃんと認めてもらいたいもんね。おじさまだって、期待してくれてるワケだし)

 愛美だって、期待には応えたい。だからといって、その才能に(おご)るつもりはない。もちろん、ずっと努力は続けていくつもりでいるけれど――。

「まあ、やれるだけのことはやったからね。あとは運任せってことかなー」

「そうなるね。あたしも、愛美が入選できるように一生懸命(けんめい)祈っとくよ。珠莉にも言っとくから」

「……うん、ありがと。そこまでしてくれなくてもいいけど、気持ちだけもらっとくね」

 ちなみに、さやかはクリスチャンでも何でもないらしい。珠莉はどうだか知らないけれど。