「そういえば、俺が八雲さんとここに来たのは、みんなに朝ご飯の支度ができたって知らせるためだったんだよ!」


 そうしてちょう助は、近くにいた黒桜に「ちょっと運ぶのを手伝ってくれますか?」と声をかけ、厨房に戻った。

 しばらくもしないうちに玄関ホールに戻ってきたふたりの手には、人数分のどんぶりの乗ったお盆が持たれていた。


「わ、わぁぁあああ〜〜! すごい!」


 どんぶりの中身を見た花は、目をキラキラと輝かせて感嘆する。


「今日の朝食は海鮮丼だよ! 朝、すごく良い魚や魚介類が手に入ったから、みんなにも是非食べてもらいたくって!」


 ちょう助の言葉の通り、お盆の上には新鮮な魚介類がこれでもかというほど盛られた海鮮丼があった。

 赤みが綺麗なまぐろに、脂の乗った極上のトロ。

 口の中でとろけるサーモンに、醤油漬けにされたいくら。

 光沢のある新鮮な鯵の切り身に、プリプリの甘海老。

 弾力のあるイカに、立派なホタテの貝柱……などなど、まさに豪華過ぎる一品だ。


「ほほぅ、こりゃ食べたら力が付きそうじゃの」

「うう……っ。めちゃくちゃおいしそうです……」


 まさに熱海の宝石箱や〜!

 お盆の上に載った海鮮丼を見ながら、花は感動してそれぞれの味や食感を頭の中で想像した。

 気を抜いたらまた腹の虫が大音量で鳴ってしまいそうだ。

 それほど今、目の前にある海鮮丼は空腹と疲れた心を癒やすのに相応しい一品に違いなかった。