「ちょう助くんが食べてる練り物揚げもおいしそうだね!」
「ああ、うん。串に刺さってるから食べ歩きにもちょうどいいし、やっぱり揚げたてなのもあってめちゃくちゃおいしいよ」
練り物揚げも、温泉まんじゅうと同じく商店街にある店で買ったものだ。
串に刺さった肉厚な一品は、噛めば口の中にジュワッと練り物特有の旨味と磯の香りが広がる。
弾力のある歯ごたえが食欲を掻き立て、噛めば噛むほど素材の味を思う存分楽しむことができた。
「甘いものを食べたあとって、しょっぱいものが食べたくなるよね……」
「花……さっきはしょっぱいものを食べたあとは甘いものが食べたくなるって言って、今、温泉まんじゅうを食べてるんじゃないの?」
「え、えへへ。そうだっけ?」
頬をかきながら顔を逸らした花の食欲は留まることを知らない。
子供の頃に経験した貧乏暮らしのせいで、おいしいものをお腹いっぱい食べられることに人並み以上に幸福を感じてしまうのだ。
(あ……)
と、そのとき、花はふとある人物を視界に捉えて目を留めた。
つくもの主人である、"八雲"だ。
八雲は先程から手焼き煎餅を物色していたのだが、ちょうど商品片手に三人の元へと戻ってくるところだった。
「八雲さん、なんのお煎餅を買ったんですか?」
「醤油煎餅だ。久々に商店街に来たことだし、何も食べずに帰るというのも変だろう」
八雲の言葉と同時に、花の鼻先を醤油の香ばしい香りが掠めた。
温泉まんじゅうや練り物揚げと同じく、煎餅も焼き立てホヤホヤだ。