「もしかして、お前が巷で噂になってる八雲の嫁かぁ?」

「えっ!?」


 突然声をかけられた花は、弾かれたように顔を上げて男を見た。

 男は眼光鋭く、睨むように花を見ている。

 気圧された花は胸の前で両手を握りしめると、思わずゴクリと喉を鳴らした。


「あ、あの……?」

「ケッ。なんだよ。話がかなり盛られてんな。普通にブスじゃん」

「ブ……っ!?」


 ブス⁉ 今、確かにブスって言いましたよね⁉


「絶世の美女だとかなんだとか言われてたから、どんなもんかと思ったら……。美女の"び"の字もない、醜女(しこめ)じゃんか」


 失礼極まりない男の物言いに、花はポカンと口を開けて絶句した。

 ブスに醜女。

 いや、確かに美女ではないことは認めよう。

 だとしても、ここまで面と向かって外見を罵られたのは初めての経験だった。


(別に、自分が美人だとかは思ったこともないけど、それにしたってあんまりじゃない?)


「……相変わらず、無礼で幼稚な言動と態度をとるところは変わらないようだな、政宗」

「あぁ?」

「今日は事前の連絡もなく来て、何事だ」


 と、不意に花と男の間に割って入ったのは八雲だった。

 予想外のことに、花の鼓動がドキンと跳ねる。

 八雲は男の視線を遮り、花を背に守るように立つと、低く温度のない声と視線を男に向けた。