「あれ、ブレスレットがない」
かばんの中の教科書を取り出そうとした際に、それがないことに気がついた。
お母さんからもらった最後のプレゼントのブレスレット、肌身離さずかばんにつけていたのに。
どこかで落としたのかな。
いやでも学校を出るときはまだあったし……
もしかしたら家の中のどこかに落ちてるかも。
スマホの存在すら忘れていた私の頭の中は、ブレスレットでいっぱいだった。
「どこだろー……」
廊下や玄関、トイレ、お風呂場をくまなく探して歩くけどそれらしいものはない。
リビングが怪しいかなと思い向かうと、テーブルの下や棚の隙間、テレビの前やゴミ箱、ありとあらゆる場所を探す。
これだけ探しても見つからないってことは、外で落としてきたのかな……
今から学校までの道のりたどってみる?
でももう薄暗くなってきてるから探すのは困難そうだけど。
「ママぁ、これつけてー!」
キッチンで美織ちゃんの大きな声がして、意識を向けた。
どうしたの、と早苗さんが料理の合間に声をかけた。
「キレーだからここにつけてー」
綺麗だから、つけて……?
それってもしかして私が探してるブレスレットなんじゃ……
小さな希望を胸に、美織ちゃんがいるキッチンへと向かった私。
近づくと、一生懸命ピンッと手を伸ばしている美織ちゃんが持っていたそれが視界に映り込んだ。
「それ、どこにあったの?」
背後から声をかけると、美織ちゃんが私の方を向いて、ろーかにおちてた! とキラキラと目を輝かせていた。
ブレスレットが綺麗だから興奮でもしているんだろう。
また早苗さんに向き直ると、つけてつけてーと催促をする。
けれど、私が声をかけた理由を早苗さんは理解したのか。