いい子でいれば、みんなが私に優しくしてくれる。
いい子でいたら、苦しい思いなんてしなくて済む。


「ねえねえ、七海もそう思わない?」
「え…ああ、うん!」


意識の端っこの方で二人のやりとりがぼんやりと聞こえて、それに適当に相槌を打つ。
だよねぇ! と笑ってまた会話はゆるやかに進んでいく。一秒ごとに上書きされていく。
古い記憶なんてどんどん忘れていく。

だから、私はこれでいい。
その場の雰囲気を楽しんでいるように、青春しているように、見えたらそれでいい。
難しいことなんてない。難しく考える必要はない。
二人の会話にうんうん、と笑って頷いて、そしてたまに返事を返す。それの繰り返し。

そうすれば春の陽気のようにゆるやかに流れてゆく。
そしたらお昼休みなんてあっという間に終わりに近づくのだ。


だから私は今日も笑う。
だから私は、今日も猫を被る。