「……私も、ごめん」

ポツリと謝ると、え、と早苗さんは困惑する。

向けられた視線を少し逸らすと、

「私、ほんとは分かってたはずだった。美織ちゃんがわざと壊したわけじゃないって、知ってたはずだったのに」

言葉を短く切ったあと、目を伏せてブレスレットを見てから、心を落ち着かせると、

「カッとなって怒鳴ったから、美織ちゃんは驚いて泣かせてしまった」
「それは七海ちゃんのせいじゃないわ」
「うん。でも、ごめん」


不思議と言葉は落ち着いていた。

先輩と話したからかな? それともブレスレットが直ったからかな?

「それと」言いかけて、早苗さんへ視線を向けると、一瞬だけ顔を強張らせた早苗さん。


「ひどいこと言ってごめん、なさい」

私が謝ると、え、と困惑したあとに、

「七海ちゃんは何も悪くないわ。悪いのは、私なのよ」

言って、顔を歪めたあと、

「私がもっと美織にダメだよって言えていたらこんなことにはなってなかったのに……」

力なく弱々しく呟いた早苗さん。
まるで自分を責めているかのように見えて、私はそれに首を振った。


「早苗さんのせいじゃないよ」

だから、と続けると、

「もう、そんなに自分責めないで」

言うと、早苗さんは口元を押さえて、涙を流した。

そんな早苗さんの肩をさするお父さん。


きっと私が帰って来るまで自分のことそうやって責めていたのかな、そう思うと胸が張り裂けそうだった。


「七海、ほんとすまない」

さすりながら視線だけを私の方へ向けると、

「俺が一番何も分かっていなかった」


いつも笑顔は欠かさなかったお父さんが、今は疲れ切ったような顔をしている。
まるでお母さんが亡くなったあとのような表情で。


「七海が家を飛び出したあと、七海に何かあったらどうしようってずっと心配だった。だからあちこち探してみたけど、それでも見つからなくて」
「……探して、くれたの?」

呆気にとられたように眉を上げたあと、お父さんは、

「当たり前じゃないか。お前は俺の大事な娘なんだぞ」

悲しそうに笑った。


私は叱られるかと思っていたのに、それは違ったんだ。
──ああ、だからあんなにたくさん電話をかけてくれたんだ。