「あー、今日は緊張したなあ。まさかお二人であんな話を仕組んでいたなんて」

帰りの新幹線で佳亮は二人に対してそう言った。

「だって、これは佳亮くんのご両親と大瀧の話だもの。私が解決しなきゃいけない話だったのよ。……佑さんは巻き込まれてしまって災難だったけど」

「いや。僕は薫子さんと一緒に仕事が出来て嬉しかったよ。また会いましょう。……杉山くんには報告をして」

望月の言葉に薫子が、そうね、と微笑んでいる。

「そんな狭い目で見ませんよ……。お二人とも、恩人だ。奈良に足を運んだときは、是非泊ってくださいね」

「是非そうさせてもらおう」

「私もお義父さまにお誘い頂いたし、勿論よ」

新幹線は、やがて東京へ。改札を潜ると望月とは別れた。やっと二人になれてほっとする。電車を待つホームで労いの言葉を掛ける。

「今日は本当にお疲れさまでした。何でも好きなご飯作りますよ、何が良いですか?」

「そうねえ、じゃあ……」

薫子が少し考えた後、こう言った。

「世界で一番美味しいご飯」

薫子がウインクして言うのに、佳亮は破願して薫子の手を取った。薫子も手を握り返してくれて、それだけで幸せになる。

これからも薫子の為に美味しいご飯を沢山作ろう。美味しいご飯は、人生を豊かにするのだ――――。