*
「そういうわけで、ケーキを買ってあるのよ」
一通り自己紹介と雑談を終えたところで、織畑が可愛いお皿にケーキを盛って運んできた。
「杉山くんも、流石にケーキは作らないでしょう」
そう言われて苦笑する。確かに作れない。
「出来ない所を見せてあげるのもやさしさよ」
織畑が言うので、そういうものか、と納得した。
「大瀧さんも、良ければどうぞ」
そう言われて薫子は栗のタルトを選んでいた。佳亮は巨峰のムースだ。
「薫子さん、栗好きですか?」
沢山のケーキの中から栗のタルトを選んだのだから、きっと好きなのだろうと思うと、うん、という返事が返ってきた。
「じゃあ、時期になったら栗ご飯でもやりましょうか」
「良いわね。手伝わせて」
最近薫子は、オムライスだけじゃなくて料理を手伝うとよく言うようになった。佳亮の為にしてくれようという気持ちが嬉しいので、一緒にキッチンに立ったりすることもある。
「良いですね。二人で作りましょう」
佳亮が薫子に笑いかけると、「ほら、こういうところを見習って」と織畑が佐倉に言っていた。
「僕は料理は全然出来ないから役に立たないよ」
「姿勢が大事よ。手伝おうとする姿勢」
まいったな、と佐倉が困り顔になって、その話は終わった。帰り際に織畑と薫子がラインを交換していた。
*
「楽しめましたか?」
帰り道に佳亮は薫子に尋ねた。急に見知らぬ人の家に招かれて緊張していたから、心配だった。
「うん、楽しめたわ。私、家を出てから会社の人としか交友がなかったから、新しい知り合いが出来て嬉しい」
「そうですか。なら良かった」
微笑み返してくれる薫子にそう言う。
「…私も何時か…、佳亮くんのご両親に、お料理振舞わなきゃいけないのかしら…」
並んで歩く道すがら、薫子がそんなことを呟くので、気にしないで、と言った。
「まだ先のことなので心配要りませんが、両親は僕のことよく分かってますし、薫子さんのこともきっと良く分かってくれます」
「そうだと良いけど…」
料理の腕は、どうしたって佳亮のほうが上だから、其処は両親を納得させるつもりだ。薫子に無理強いをするつもりもないし、薫子の為に料理を作れるなら嬉しいだけだから困ることはない。
「それより、僕のほうが問題ですよ」
「なにが?」
薫子がきょとんとして言うから、佳亮はちょっとため息が出てしまう。
「あんなお屋敷に住んではる薫子さんのご両親に、僕が受け入れてもらえるかどうかの方ですよ」
ううーん。以前話した両親の反応を思い出して、薫子が唸った。
「大問題だなあ…」
肩を落とす佳亮を薫子が励ます。
「私も両親を納得させるわ」
薫子はそう言ってくれたけど、やっぱり大きな問題だった。
「そういうわけで、ケーキを買ってあるのよ」
一通り自己紹介と雑談を終えたところで、織畑が可愛いお皿にケーキを盛って運んできた。
「杉山くんも、流石にケーキは作らないでしょう」
そう言われて苦笑する。確かに作れない。
「出来ない所を見せてあげるのもやさしさよ」
織畑が言うので、そういうものか、と納得した。
「大瀧さんも、良ければどうぞ」
そう言われて薫子は栗のタルトを選んでいた。佳亮は巨峰のムースだ。
「薫子さん、栗好きですか?」
沢山のケーキの中から栗のタルトを選んだのだから、きっと好きなのだろうと思うと、うん、という返事が返ってきた。
「じゃあ、時期になったら栗ご飯でもやりましょうか」
「良いわね。手伝わせて」
最近薫子は、オムライスだけじゃなくて料理を手伝うとよく言うようになった。佳亮の為にしてくれようという気持ちが嬉しいので、一緒にキッチンに立ったりすることもある。
「良いですね。二人で作りましょう」
佳亮が薫子に笑いかけると、「ほら、こういうところを見習って」と織畑が佐倉に言っていた。
「僕は料理は全然出来ないから役に立たないよ」
「姿勢が大事よ。手伝おうとする姿勢」
まいったな、と佐倉が困り顔になって、その話は終わった。帰り際に織畑と薫子がラインを交換していた。
*
「楽しめましたか?」
帰り道に佳亮は薫子に尋ねた。急に見知らぬ人の家に招かれて緊張していたから、心配だった。
「うん、楽しめたわ。私、家を出てから会社の人としか交友がなかったから、新しい知り合いが出来て嬉しい」
「そうですか。なら良かった」
微笑み返してくれる薫子にそう言う。
「…私も何時か…、佳亮くんのご両親に、お料理振舞わなきゃいけないのかしら…」
並んで歩く道すがら、薫子がそんなことを呟くので、気にしないで、と言った。
「まだ先のことなので心配要りませんが、両親は僕のことよく分かってますし、薫子さんのこともきっと良く分かってくれます」
「そうだと良いけど…」
料理の腕は、どうしたって佳亮のほうが上だから、其処は両親を納得させるつもりだ。薫子に無理強いをするつもりもないし、薫子の為に料理を作れるなら嬉しいだけだから困ることはない。
「それより、僕のほうが問題ですよ」
「なにが?」
薫子がきょとんとして言うから、佳亮はちょっとため息が出てしまう。
「あんなお屋敷に住んではる薫子さんのご両親に、僕が受け入れてもらえるかどうかの方ですよ」
ううーん。以前話した両親の反応を思い出して、薫子が唸った。
「大問題だなあ…」
肩を落とす佳亮を薫子が励ます。
「私も両親を納得させるわ」
薫子はそう言ってくれたけど、やっぱり大きな問題だった。