ー14日目ー

「……というわけで、神田さんにもお帰りいただきました」

社長室を柳田さんと共に訪れ、昨夜の神田さんの失態を報告した。

「とりあえず……」

柳田さんに、申し訳なさそうな顔を向ける社長。

「柳田さん。今回は、私の軽率な言動で迷惑をかけてしまってすまなかったね」

「いえ。これで陽一さんのことも、大手を振って公表できると思えば、大したことじゃないですよ」

再度、社長の謝罪を受けると、柳田さんは秘書室へ戻っていった。

「さてと、陽一」

ここからは、父親としての話のようだ。

「お前にも悪いことをしたな」

「本当だよ。この忙しい時に」

「すまん、すまん。彼女のことも、もっと早くに聞かせてくれてれば……」

「そうは言っても、俺たち遠距離だったんで。ちゃんと顔を合わせてプロポーズしたかったんだよ。そういうのって、OKもらえてから報告するものだろ?」

「まあ、そうだな。しかし、本当にいい人を捕まえたな。母さんもすっかり亜澄さんを気に入ったようだ」

帰国の報告で実家に帰った際、婚約者として亜澄を紹介している。

一時帰国して彼女を見かけて以来、すっかり虜になった俺は、遠距離になるとわかっていながら彼女を口説き落とした。
時差に悩みながら、毎日メールや電話をしてやっと実ったこの想い。本社勤務に戻った早々に、プロポーズをしていた。

「仕事を早退させてまで、結婚式の衣装選びとか連れ回すのは、今後はなしですよ」

少し強めに言っておく。〝まあ、言い聞かせておく〟なんて言ってるけど、家庭内の力関係を思えば、その効力は怪しいところ。