「神田さん。あなたが今夜取った行動が、どういうことかわかっていますか?」

「え?」

「公衆の面前で、主催者のお気に入りである涼を、その外見だけでいろいろと決めつけて非難した。まあ、従兄弟である私も近くにいたので、丸くおさめられるでしょう。それでも念のため、柳田さんにお願いして手は打ってあります。
が、そうでなかったら、花菱不動産として、主催者のお気に入りの涼を非難し、あの場から追い出そうとしたと捉えかねられない。
これがどういうことか、頭の良いあなたならわかりますね?」

忙しい人だ。再び顔を青くしている。

「幸い、涼本人のケアも大丈夫です。ですが、今夜のあなたの所業を見逃すわけにはいきません。
議員のお父様について学ばれたあなたは、大変仕事のできる方です。
しかし、そのお父様についていたことが仇になっているようですよ」

それはどういうことかと、首を傾げる彼女をじっと見据える。

「自分にとって役に立つ人間かどうか。自分より上の人なのか下の人なのか。あなたは出会った人に対して、そうやって分類していませんか?」

俺の指摘を理解し、ハッとした表情になる。彼女には、まだ自分を変えられる余地があるのかもしれない。