「あ、あの……亜澄さんとか涼さんって……」

内心、鬱陶しいと思いつつ、彼女と向き合う。

「涼は私の従兄弟で、有名な画家です。今日彼が来ていたのは、主催者から直々に招待を受けたからです。彼、涼の大ファンなんですよ」

神田さんはこのパーティーの主催者を、よく知っているはずだ。事態を把握したようで、再び顔色が悪くなっていく。

「それから、亜澄は私の婚約者です」

そう断言すると、今度は困惑し出したようだ。

「は?え?」

そりゃそうだ。彼女達は、俺の婚約者になろうと乗り込んできたのだから。
でも、花菱サイドは一度だってそんなことを口にしていない。

「婚約者って……じゃ、じゃあ、私達は……」

「言ったはずですよ。4人は鍛えてやって欲しいと頼まれて、うちで預かっていると」

「で、でも、それは……」

少しずつ怒りを滲ませる彼女に、なんの罪悪感も湧いてこない。むしろ、やっと追い払えそうだとホッとする。

「それはもなにも、私も社長も、そうとしか言っていないはずですよ。あなたのお父様が勝手に見合いとでも思い込んだのでしょう。私は一切思っていませんが」

ふるふると肩を震わす彼女を、感情のこもらない目で見つめる。
ここで大声を出される前に、きっちりさせておこう。社長には事後報告になるが、今夜彼女がしでかしたことを考えれば、事後であっても大丈夫だろう。