ー12日目ー

明日の夜、異業種交流のパーティーに出席することになっている。今回は、将来を見据えてお前が行ってこいと言い渡されてしまった。まあ仕方がない。

同行は、もちろん山形さんをと言いたいところだったが、ここで神田さんが「私に行かせてください」と申し出てきた。

「私は残っている仕事を片付けているので、神田さんにお願いします」

山形さんに遠慮がちに言われてしまった。俺が希望して異動してもらったというのに、申し訳ないばかりだ。



「副社長。明日のドレスコードの方は……」

山形さんと話をしていたところ、神田さんが割り込んできた。いつもならこんなふうに入ってこない彼女だが、おそらく意図的にだろう。

ドレスコードって……秘書課の人間として同行するのだから、聞くまでもなくスーツだというのに。

「やはり、パートナーとしてドレスを用意した方が……」

彼女の発言に、思わず額に手を当てた。ため息を隠さず、不機嫌を醸し出す。

神田さんはパートナーとして同行することが、婚約者だと認識されるとわかっていて発言しているはずだ。

「山形さん、申し訳ない。続きは後で打ち合わせしよう」

彼女が離れたのを見届けて、再び神田さんに向き合う。

「明日は、秘書課の人間として同行していただきます。したがって、服装はいつも通りでけっこうです。守られない場合は、他の者を同行させますので」

ここまで言っておけば、突飛なことはしないだろう。