ついに、預かっているお嬢さんもあと一人になった。
それもあるのか、山形さんが何かを言われることは無くなってホッとしていた。

残った神田さんは、多少心細さを感じているだろうかと思ったけれど、すぐに自分の考えを改めさせられた。

彼女は議員の娘として、長年父親の元で仕事を学んできた。それもあって、仕事のできる人だった。全く違う職種だというのに、教えれば教えた以上の結果を出してくることに、柳田さんも感心するほどだ。

見合い云々はともかく、彼女さえその気なら、我が社に引き入れてもいいかと思えるほどだ。

けれど、彼女がいくら優秀だとしても、それはしない。婚約者だなんて勘違いされたら、たまったものではない。
いくら即戦力になろうとも、自分の人生を犠牲にするつもりは微塵もない。

結婚は〝決められた人〟ではなく、〝決めた人〟とする。