「少し前に飲みに行ってな、そこで知り合いのお偉いさん方と一緒になったんだよ」

口調からすると、プライベートな席で偶然居合わせて合流したのだろう。フットワークが軽く人たらしな親父は、いろいろなところで知り合いを作ってくるのだ。

「でな。そろそろ息子が帰ってくる話をしたんだよ。要職に就くことになるし、いい歳だし、帰国したら身を固めてもらいたいなんて……」

ああ、なんかわかった。嫌な予感しかしない。

「そしたら、翌日になって数人から連絡があってな、娘や孫をうちで鍛えてやって欲しいと……」

やっぱりそうか。

「それって、見合いってことですよね?」

「いや、その……はっきりとそんなことは言ってないんだよ。俺はただ、世間話程度にお前のことを話題にしただけで」

「けれど、4人もの女性が来てしまったと?」

ジロリと睨む俺を直視できなくなった親父は、床に壁にと視線を泳がせている。
やり手社長のはずなのに、親父としてはポンコツだな。