「今後、彼とは頻繁にやり取りすることになるから紹介しておくよ。イーサンは英語しか話せないんだ。山形さんは、英語を話せたはずですよね?」

「はい」

俺がお互いの紹介をすると、イーサンは早速彼女と雑談を始めた。本当に悪趣味だこと。

山形さんは何かを確認するようにこちらをちらりと見た。肩をすくめてみせると、一つ頷いてイーサンの話に答えていった。
そして、和やかな雰囲気のまま、山形さんは解放された。

「陽一、彼女はいいよ。僕の元に欲しいぐらいだ」

「あげられませんよ」

若干、不機嫌な物言いになってしまった。
イーサンはニヤリとすると、一人で勝手に納得して仕事の話に戻した。



話を終えてイーサンの見送りに出ると、神田さんと話す片桐さんの姿があった。彼女は俺たちに気付きもしなかった。山形さんはいち早く気が付いて、イーサンの見送りに来てくれた。

「お金持ちのイケオジ かと思ったら、信じられない田舎もんよ。一瞬、何語かと思ったわ。言うならば、彼の英語はズーズー弁よ。聞き取れやしない」

全部本人に聞こえてるぞと、注意すべきところだが、敢えてそれはしない。
俺の後ろで慌てる山形さんには申し訳ないが。

「陽一、あの女性は素直だね」

「すまない、イーサン」

突然日本語を話し出したイーサンに、山形さんは目を丸くした。けれど、彼女はその場で言葉を発することなく、態度も変えなかった。