「山形さん。あなたがパンツスタイルを貫く理由ぐらい、知っていますよ」

努めて穏やかに言うと、彼女は少し狼狽えた。

「見かけたことがありますから。大きな脚立を一人で運んで、蛍光灯を取り替える姿とか」

「え？」

〝いつだろう……〟なんて呟きながら、俯いてしまう。

以前、一時帰国した際に見かけた姿だ。
たまたま居合わせた男性社員が、慌てて声をかけていた。

「や、山形さん。それは男性にお願いしましょう。なんなら、僕がやりますから」

「ありがとうございます。でも、大丈夫です。これは総務の私に任された仕事です。そのために動きやすい格好をしているので、問題はありません」

そう言う彼女は、今日と同じようなパンツスタイルに、ヒールがほとんどない靴を履いていた。

結局、彼女は慣れた手つきで交換を終えると、さっと戻っていった。