「副社長、山形さんがいらっしゃいました」

ノックの後に柳田さんに告げられた言葉にハッとする。
途端に、さっきまでの苛立ちが消えていく。

「どうぞ」

「失礼します」

控えめな声音にホッとする。
そうだよ。秘書に求めるのは、この控えめな姿だ。

「柳田さん。ひとまず彼女と話しをさせてください。後で杉田さんを呼んでもらいますので」

柳田さんが退室すると、室内には山形さんと自分の2人だけになった。

昨日まで総務課で働いていた山形さんは、グレーのパンツに薄い水色のブラウスと、落ち着いた服装だった。