「次の指示をください」

ようやく口をついたセリフに、ほっと胸をなで下ろす。

俺にだって、部隊の役に立てることはあるはずだ。

「具体的な指示をくだされば、ちゃんとやれます」

隊長は腕の中に、大切にハヤブサを抱いていた。

R38を記憶したハヤブサだ、普通の鳥じゃない。

ハヤブサは腕の中で隊長を見上げ、もう一度小さく鳴いた。

そのハヤブサのしぐさに、隊長は見たこともない優しい笑みをもらす。

ゆっくりと歩き出したその人は、俺たちに一瞥もくれることなく行ってしまった。

きっと、そういうことなのだろう。

「重人。飯塚さんを追いかけよう」

「……隊長直属の精鋭部隊が、チームで追いかけてるんだぞ」

「隊長の指示がない以上、仕方ないだろ」

「隊長からの指示って?」

「……。飯塚さんの確保」

「そんなの、もう俺たちだけじゃ無理だって、十分分かっただろ」

竹内の声が、大きくなった。

「お前の目的はなんだ!」

その言葉に耳を疑う。

竹内を見上げた。

なんでそんな当たり前のことを聞くんだ。

「飯塚さんを救うに決まってるだろ」

竹内はポケットから俺の端末だったものを取り出すと、それを地面に叩きつける。

「おいっ!」

「もういい。チームは解消だ。俺は都庁へ行く」

細く背の高い、見慣れた背中まで遠のいていく。

「なんだよ! お前は違ったって言うのか?」

隊長に嫌われていることは、最初から知っている。

同い年だけど遙かに部隊所属歴の長い竹内とは、応対が全く違う。

そんなことに負い目や劣等感を感じなかったのは、全部飯塚さんがいてくれたからだ。