「なんだよコレ」

隊長がつけたナイロンのような輪は、目くらましだったのか。

あちこちにマーキングされた点が表示されている。

「これじゃ、どれが本物か分からないじゃないか」

竹内は叫んだ。

「違う。上を見ろ。自分の目で見たものだけを信じるんだ」

背中の竹内は、空を見上げた。

「なるほど了解!」

ペダルに体重をかける。

電動自転車特有の加速で走り出した。

後ろの竹内は時折鳴いて、R38と何かを話していた。

彼は俺たちを近くの自然公園に誘導すると、その上空で旋回を始めた。

ここで飯塚さんを待っているのか? 

背中の竹内はまたR38に声をかける。

俺たちは公園の敷地に入り込んだ。

「おい重人、ちょっと待て!」

後ろでブレーキをかけられ、俺は上空を見上げた。

R38に向かって何者かが急降下している。

黒い羽根が飛び散った。

逃げようと身を翻すも間に合わない。

二度、三度と激しい攻撃を受け、カラスは為す術もなく失速する。

「急げ」

墜落するR38の影を追う。

墜ちていくそれを捉えた影は、自らの意志で急降下を始めた。

キリリとつり上がった眼。

それを縁取る黄金が光る。

緑の芝生の上で、ブルーグレイの強く美しい翼を誇らしげに畳んだ。

「お前、どこから……」

ハヤブサだ。

近寄ろうとした瞬間、耳元の空気が切り裂かれた。