真昼の公園、そのど真ん中に立つ。

日曜昼間の公園というのは、家族連れの平和な団らんの場でもある。

仁王立ちで並んだ俺たちは、走り回る子供たちの中で覚悟を決めた。

「本気でやるのか?」

「当たり前だ」

天命のシステムを使って、公園を立ち入り禁止にすることも可能だったが、そうでなくても今は不安定なシステムに、余計な負担はかけたくはない。

民間ネットワークシステムを利用するということは、飯塚さんの監視の目に触れる危険もある。

あえて何もせずこうして立つことが、目くらましとして有効なのだ。

俺はR38の羽根を空高く掲げた。

竹内と二人、一心不乱にカラスの鳴き真似を始める。

『すぐに集まれ』という呼び声に、周辺の空気はざわつき始めた。

樹上の鳥たちは不穏な動きを始め、地上の人間は俺たちから距離を取る。

青く突き抜けた空に、黒い翼が見えた。

「カァ! クワァ、 カー!」

「グウェ、アァ、クワー!」

R38に向かって必死に話しかける。

彼は部隊で代々血統管理され、かつ特別に訓練されたエリート中のエリートカラスだ。

この声を聞き分け、意味を取ることが、必ず出来る。

現れた影は上空で弧を描いた。

あの空を舞うカラスが、本物のR38だとしたら……。

「カー!」

空からの返事だ。

「やった!」

今度は失敗しない。

竹内が端末で上空のカラスを追い、俺は前を向いてペダルをこぐ。

ドローンだなんて、電波を発する機器は使えない。

我が家のママチャリなんかじゃない、本部から借りた自動水平装置搭載、電動二人乗り自転車にまたがった。

ハンドルに備え付けられた画面にマップが映し出される。