「あぁ、ここか」

「前から少しずつ移動してましたからね、やっぱりなって感じですよ」

竹内の言葉に、飯塚さんはうなずく。

山と田んぼに囲まれたのどかな田舎町だ。

そのバス停の隣に、古ぼけて機能しているのかも怪しげな汚れた自動販売機が置かれている。

売られている商品が透けて見えるはずのプラスチック板は、泥と傷で何の商品が入っているのかもよく分からない。

移動していたというのは、どういうことなんだろう。竹内は画面を指さした。

「これは一見自販機のように見えるが、ただの自販機じゃない。もちろん多くの自販機はただの自販機だが、全ての自販機がただの自販機ではないんだ」

「ただの自販機とは?」

「なるほど。それはまた別の話だったな」

竹内はニヤリと笑った。

人をバカにしたようなその態度に少々ムッとする。

飯塚さんが口を開いた。

「常識を疑え。あらゆる可能性を想定しろ。世界は想像を以上に不思議なことであふれている」

「どういう意味ですか?」

「自分の目で見たものだけを信じるんだ」

「自力で動く自販機を信じろと?」

自動販売機は自動で商品を販売するから自販機と言うのかもしれないが、自力で移動可能とは聞いてない。

というか、そんな常識ありえない。

「これは我が隊に伝わる、新人に送られる伝統の言葉だ。君の見るこれからの世界が、幸福であることを祈る」

そう言うと、何かを取り出した。

「これが正式な隊員章だ。いつも必ず、どこかに身につけているように」

飯塚さんの手が、俺の襟の裏にバッジをつけた。

「さぁ、行こう」

新たな警報が鳴り響く。

『この圏内で、電圧が異常に高まっています』