上階でガタンという大きな音がした。

目を合わせる。

慌てて地上に駆け上がると、アンドロイド店員全員が床に横転し、パンを運ぶ大型トレイやペットボトルを抱えたまま、不器用に足をばたつかせていた。

「誤作動だ」

見た目には本物の人間と全く変わらない。

いつも機械的に作業をしているようでも、彼らは『ヒト』だった。

なのに今、本来のロボットとしての姿をあらわにされている。

竹内は彼らを強制終了させた。

本体についている停止ボタンを押すと、そのまま動きを止めてしまう。

体は凍り付いたように動かない。

頭ではちゃんと違うと分かっていても、気分はよくない。

「飯塚さんは何がしたいんだ」

「そんなこと、追求したって無駄だって言ったのは、お前だろ」

動けなくなったロボットたちは、まるで死んでしまった人たちのようだ。

「そうだよな……」

竹内は床に転がされたアンドロイドたちを見下ろした。

それを一体ずつ丁寧に、二人で地下へ運ぶ。

「俺はもう許さないよ」

彼がこんなにも腹を立てているのを、俺は初めて見たような気がする。

ずっとこいつらのメンテナンスを手がけてきたのは、竹内といづみだった。

「こうなりゃ肉弾戦でもなんでもやってやるよ!」

「……R38がうちに来たんだ」

「隊長への報告は?」

「それが本当にR38だったのかという確証はない」

竹内は腕を組み、くせである親指を噛んだ。

「飯塚さんがいなくなった瞬間から、R38のデータは消されている。天命が復活して位置情報を追えたとしても、それがダミー、別の個体ではないという確実な証明は出来ない」

「あれはR38だったと思う」

「カラスが自分の自由意志でお前のところに来たとでも思ってんのか?」

「俺は、いづみが送ったんだと思っている」

その言葉に、竹内は黒縁の眼鏡を持ち上げた。