「片付けが終わったという報告がまだだ。さっさと自分の仕事を済ませろ」

沈黙がその場を支配する。

襟元のマイクだけが、常に何かを伝えていた。

隊長の細く鋭い眼光が、慎重にあたりを警戒している。

竹内はふいに頭を下げた。

「報告を怠り、すみませんでした」

「違います! 俺が勝手にわがままを……」

駆け寄って一緒に謝ろうとした俺を、彼は静かに、だけど力強く押しのける。

「お願いします。俺が探したいんです。どうして俺を置いていったのか、それが聞きたいんです」

「ダメだ。お前の居場所は、あのコンビニだ」

隊長は腕の自治会腕章を外した。

歩き出す。

口元が動いているのは、次の現場への指示を出しているからだろう。

竹内は動けなくなってしまった。

「待ってください! 隊長が見張りに来てるってことは、やっぱりこの噴水は再建されたってことじゃないんですか? 宣戦布告として破壊され、そのまま放置しているのであれば、こんなところに興味はないはずです」

地面から這い出してきたばかりの虫が鳴いている。

そう言った俺を、隊長はじっと見下ろした。

やがて、ふと視線をそらす。

「いいだろう。お前たちにも手伝わせてやる。正直、人手はいくらあっても足りない」

隊長は竹内を振り返った。

「ただし、他の部隊の手をわずらわせるな。03の一番近くにいた奴らに、何とも思わないのがいないわけではない」

「ありがとうございます」

俺が頭を下げると、竹内も一緒に頭を下げた。

「05、お前の悪いくせだ」

今度こそ本当に、隊長は歩き出した。

残された闇の中で、その姿を静かに見送る。

帰り道、深夜の幹線道路をぶっ飛ばした。

竹内は一言も口を利かなかった。