「重人!」

竹内は叫ぶ。

あたりにはうっそうとした青黒い草がひしめく。

遠い外灯の明かりに、ぼんやりと白く浮かび上がる噴水とその枯れたプールをめがけて、手元の火は赤く揺れた。

「ここは火気厳禁ですよ」

その火を握り潰したのは、隊長だった。

腕に自治会役員の腕章を巻いている。

「なんだか騒ぎになっているようだし、念のために見回りに来てよかった」

隊長はすました顔で微笑む。

握りつぶされた炎は、簡単に崩れ落ちた。

「夜も遅い。野次馬みたいなことしてないで、早く帰りなさい」

「どうやって噴水を元に戻したんですか!」

「はは、何を言っているんだい。ネットの噂なんて、簡単に信じちゃいけないよ」

他人行儀な物言いに、隊長は手袋を外しそれをポケットに突っ込んだ。

簡単に俺に背を向けると、竹内を見下ろす。

「おい。片付けは終わったのか? だったら連絡くらいしろ。明日でもいいと思ったか」

俺に背を向けたまま、深いため息をつく。

「お前までがっかりさせないでくれ」

「隊長、お願いがあります。俺たちにも、飯塚さんを探させてください!」

竹内は声を振り絞る。

じっと見上げる隊長は、静かにそれを見下ろしていた。