「何がだよ」

竹内は飯塚さんの破壊した噴水の画像を切り出すと、それを画像ごと検索にかける。

「ほら、公園が特定できたぞ。それでどうするんだ?」

「……行ってみよう」

竹内からの返事はない。

頭上でカラスが鳴いた。

隊長は俺たちに背を向ける。

「バカ。さっき隊長からなんて言われた。俺たちに与えられた任務は、今は『片付け』だ」

俺は竹内の目をのぞき込む。

彼は表情を殺したまま、うつむいた。

「そしてその指示を受けたのは俺だ。お前は俺の指示に従わなくちゃいけない。戻るぞ。支部をきれいに片付けてから、次の指示を待つんだ」

竹内まで背を向ける。

俺は、このままでは終われない。

「隊長!」

振り向いたその鋭い眼光を、精一杯見上げた。

「行かせてください。俺は、俺はどうしても飯塚さんを助けたいんです!」

「俺がお前をここに追いかけて来た理由が分かるか?」

「飯塚さんがいると思ったからじゃないですか?」

自分でも、無駄に食ってかかっているということは、分かっている。

「あぁ、そうだ。お前が03の仲間で、そこに連れて行ってくれると思ったからだ」

隊長の端末が振動している。

それを取り出すと、画面を操作し始めた。

「だがお前みたいな間抜けは、さすがのあいつにもその選択肢には入らなかったらしい。05の言うことが聞こえなかったか。さっさと指示に従え」

隊長は立ち去る。

俺は竹内を振り返った。

「『イチイチ指示がないと動けないとか、子供みたいなこと言ってんじゃねーぞ』って、さっきまで言ってたのは誰だよ」

「指示じゃない、あれは『命令』だ」

竹内は歩き出した。

この俺のことを、ゴツゴツの指で指す。

「行くぞ。コンビニ営業も再開させないといけないんだ。本部からの手助けも当分頼れないとなると、マジで2人でやらないといけないんだからな!」

拳を握りしめる。

手のひらに食い込んだ爪で、血がにじんできそうだ。

それでもなお、俺は自分が竹内以上には、何も出来ないことを知っている。

動かしたくはない足を、動きたくもない方向に向かって、動かし始める。