「ナンバー05、ここの片付けを任せる。その新人も早く何とかしておけ」

圧倒的威圧感。

これがこの部隊全体を率いる隊長か。

地下基地を眼球の動きだけで観察し、地上へと出て行く。

その背中を敬礼で見送って、竹内はようやく一息ついた。

「あ~ぁ、本当に隊長が出てきちゃったよ」

壁際のスイッチを押す。

モーターの駆動音がして、ゆっくりと水が引き始めた。

「さぁ、片付けようか」

「片付けようかじゃねぇだろ!」

俺と竹内は同い年だ。

竹内の方が遙かに所属歴の長い先輩だとか、そんなことは今は関係ない。

「なんで飯塚さんはいきなりこんなこと始めたんだ。意味が分かんねぇだろ」

「それを俺に聞いて答えられると思うか。隊長が言ってるのは、そういうことだ」

地下3階のサーバー保管室に下りる。

さっと辺りを確認してから、竹内は口を開いた。

「データに関しては問題ないと思う。ここはメインサーバーではないし、あくまでクラウドの中継基地の1つだ。全サーバーを同時攻撃されない限り、中のデータは失われないし、機能ダウンすることもない。つまり、どうしたって天命の完全消失なんて、不可能なんだよ」

「そんなこと、あの飯塚さんが分からないわけがないじゃないか」

「そうだよ。だから『意味が分からない』んだ」

緊急停止されたまま、足元を水につけた巨大ハードの群れを見下ろす。

「もうここはダメだな」

司令台のある地下1階に戻って、ぐしゃぐしゃにぬれた部屋を見渡した。

「物理的な攻撃を、どうクリアするかが問題なんだ。次は何でくるだろう」

「隊長より先に飯塚さんと接触しよう。そうすれば助けられるかもしれない」

「電力に関しては本部も敏感だからな。自家発電もあるし……」

「おいっ!」

何かを考え込んでいた竹内は、ようやく顔を上げた。

「飯塚さんを探しに行こう」

「は? どうやって?」