コンビニ出入り口のガラスに「閉鎖中」の文字を貼り、目の前で吹き出し続ける水をながめながら、俺たちは為す術もなくぼんやりと座っていた。

地下で浴びたスプリンクラーの霧をたっぷりと吸い込んだ制服は、もたれたタイルの冷たさで余計にひんやりとする。

誰が通報したのか、水道局の作業車が一台、駐車場に停車した。

「先に元栓を閉めさせてもらってもよろしいでしょうか」

「あぁ、どうぞ」

そう言った作業員は、制服の帽子のつばを持ち上げた。

背の高い、細身だががっちりとした体格に焼けた肌。

少し骨張った長い頬に、鋭い眼光が光る。

「隊長!」

竹内は慌てて起立した。

「ナンバー05、状況説明を」

この声には、確かに聞き覚えがある。

カーブミラーの中にいた人物だ。

竹内の報告に一つうなずくと、隊長はまだ座り込んでいる俺を見下ろした。

「で、お前たちは何をしていた。すでに水は抜いたのか」

「いえ、まだです」

竹内は答える。

ここにいる水道局員たちは、みな部隊本部の人間なのか? 

テキパキと作業を進め、あっという間に道路からの噴水は姿を消した。

「08、何をやっている。お前も動け」

「動けと言われても、何をしていいのか分かりません」

「動くなと言われても動いたお前が、動けと言われて動けないとは滑稽だな」

長身が目の前を横切る。

隊長は俺には目もくれず、地下へと下りた。

慌てて後を追いかける。

止水と水抜き、機材の搬送が進む地下で、竹内はモニターを立ち上げた。

「相手は飯塚さんです。そう簡単には……」

「そんなことは分かっている。だから警戒していた」

隊長は制服の襟元に向かって、何かをささやいた。

次の瞬間、画面に飯塚さんの運転するトラックと、その横に座るいづみの姿が写る。

「こちらでも発信器を用意しておいた。それが生きている限り、望みはある」

「目的はなんですか? それが分からないことには、対策のしようが……」

そう言った俺を、隊長は鼻息一つで見下ろす。

「お前と話すのは、時間の無駄のようだ」

隊長は背を向け、水道局員の作業服を脱いだ。

その下から大手運送会社配達員の制服が現れる。