「本物がいるなら合成より録音する方が早いでしょ。完成したら2体目も作るけど、もうちょっと待っててよね。次は、あいうえお。順番によろしく」

俺はデモ機を抜け出し、コンビニ店舗へと向かった。

イラついたらここに来るに限る。

商品補充とレジ打ちに心癒やされる日がくるだなんて、思いもしなかった。

午後からは飯塚さんに、水道局のシステム管理について教えてもらう予定だ。

メインサーバーへのアクセス方法はもう分かっている。

その飯塚さんは、今日も出勤していなかった。

きっといつものように、午後から顔を出すのだろう。

極秘任務とは聞いているが、その行動履歴は天命からも追えないだなんて、どんなことをしているんだろう。

以前みかけた詳細な図面とコードが頭をよぎる。

天命の行動履歴照会画面には『SECRET』の文字がラベルされていた。

天命でつながっているとはいっても、個々の部隊も個人の行動も、全てがリンクしているわけじゃない。

賞味期限の近づいた商品がはじき出された。

俺は気になったものがあると、そこから拾い上げて昼飯の代わりにしている。

竹内は自分の取り分が減ると、それも気に入らないらしい。

無駄に廃棄処分品を出さないことは、オートメーション化の功績だ。

俺は再びコンビニの地下に潜り込むと、そこから水道局システムに侵入した。

予習はしてきたが、せっかくの直接指導を受けられるチャンスを無駄にしたくはない。

昨夜、家で水道局のシステムをながめていた時にも、飯塚さんからゴスロリ人形通信があった。

その時には詳しい仕事の話は何もなくて、嫌なことはないかとか、困っていないかとか、それ以外のどうでもいいような俺の話も聞いてくれる。

「お前はよく勉強するね」

「ありがとうございます」

衛星通信時代におけるステルス性能の意義について、熱く語り合った。

おかげで水道局システムへの理解は遅れたけど、それはそれで楽しかった。