「重人。何か届いたわよ」

朝日に照らされ、母の声に起こされる。

どうしてこうも親というものは、子供の話を聞かないものなんだろう。

まぶしさに目をこすった。

勝手に開けられた襖に苛立ちをおぼえつつも、パソコンに目をやる。

2台の画面は同じアニメが、全くの同タイムで流れていた。

「またテープのダビングしてんの? だったら母さんの録画してるドラマもコピーしてくれる?」

「荷物って、なに」

受け取ったのは、そこそこの大きさのある、長方形の箱だった。

送り主に記憶はないが、届け先は間違いなく俺になっている。

開けてみると、中にはゴシック調の大きな人形が入っていた。

黒いレースのワンピースに波打つ金の長い髪と大きな青い目が、独特の光を帯び、不思議な輝きを宿している。

「まぁ、なんかちょっと気味が悪いわね。あんた、こんなものにまで趣味を広げたの?」

「懸賞でたまたま当たっただけだよ」

母は両手を腰に当て、ため息をついた。

「ねぇ、ちょっといいかしら。あんたはもう少ししたら……」

「いいから、出てってよ」

そのまま腰を下ろそうとする、無粋な母を追い出しにかかる。

「ねぇ、ご飯だけはちゃんと食べるって約束でしょう? みんな下で待ってるわよ、あんたのために……」

「あぁもう、分かったよ、分かった」

そう言われれば、昨日の昼から何も口にしていない。

腹が減っているのは事実だった。

ギシギシときしむ狭い廊下を居間へと下りていく。