「で、どうやってその『天命』を使いこなすんだ?」

「『天命』を使いこなす? そんなこと出来る奴なんていねーよ」

にやりと笑った竹内は、今度は売れ残り過ぎて陳列棚から引き上げることになった、黒酢の紙パックを飲み干した。

「ただ許可された指示に従って大人しく使われるか、操る方法を模索していくしかないね」

「と、いうことは?」

「習うより慣れろ」

彼は飲み終わった紙パックを、ゴミ箱に放り込む。

俺はため息をついて自分のPCに視線を落とす。

竹内の指導の仕方は、ほとんど全てがこんな感じだ。

乱暴なのか丁寧なのかが分からない。

「つーか、網羅してる範囲が広すぎて説明のしようもないんだよ。使い方が分からなくて困ったら、本部に問い合わせればいい。秒で返事が返ってくる」

「そうなの?」

「頭おかしいんだ」

「あっそ」

「よく使うやつの基本的な操作方法だけ、簡単に説明しとく」

各鉄道会社と通信会社。電力会社に各種公官庁などなど……。

「警察関係はうちの本部、つまり天命の中の人たちも管理している。ま、俺らも警視庁の公安から独立した部署だから、基本使いたい放題だ」

地上階の扉が開く。

飯塚さんが本部から戻ってきたようだ。

「おや、なかなか進んでいるようだね。竹内くん自らが教えようだなんて、珍しくない?」

「なんか、隊長から直々に頼まれちゃって」

「はは、そうなんだ。あの人か」

そう言って、司令台のキーボードを操作する。