出動の翌日でゆっくりでいいと言われても、そういうわけには行かない。

やる気を見せるとか建前とかじゃなくて、本当に自分が早く行って早く仕事を覚えたいと思うのだから仕方がない。

朝食もそこそこに家を飛び出す俺を、母の心配と姉の嫌味が送り出す。

「ちゃんとご飯はみんなで食べるって約束だったでしょー!」

「理系大学院卒のコンビニ店員が覚えなきゃいけない仕事って大変なんだねー!」

店に駆け込む。

竹内は2階に住んでいるから、一番乗りというわけにはいかない。

地下基地に潜ったら、さらにその下にある訓練施設に連れられた。

「船舶と小型飛行機の操縦は出来るんだろ?」

「まぁ……いちおう……。理屈だけは紙面で覚えました。免許は取ってませんけど……」

それもニート期間中の課題対象だった。

それはそうなんだけど、目の前にある訓練用デモ機の様子は明らかにおかしい。

「免許証取得の有無は問題ない。うちの隊員ならいくらでも発行してもらえるからな」

体一つ潜り込ますことにも苦労するようなコックピットだ。

乗り込むところから神経を使う。

「普通にセスナが乗れるなら、基本的な操作は……まぁ、似たようなもんだ」

「で、これは?」

俺は怪しげな操縦席を見下ろしながら指をさす。

「F-22Aの操縦席だ。F-35とかF-15、16C/Dでもよかったんだけど、まぁこんなもんでしょ。それともF-106Aデルタダートとか、U-2か何かの方がよかったか?」

戦闘機の操縦訓練。

「これに慣れれば、世の中の大概の飛行機は操縦できるようになる」

「だろうな!」

竹内は操縦席の隣に座った。

「これはあくまでデモ機だからね。隊長に頼んで、そのうち一回くらいは実際に乗せてもらえるようにしておく」

「本気で言ってんの?」

「当たり前だ」

彼は深いため息をついた。

「なんだかよく分からないけど、隊長はお前に興味関心があるみたいだな。まぁ少々成績がよかったみたいだから、単にはしゃいでるだけなのかもしれないけど。あの人のことだし」

隊長の記憶といえば、カーブミラーに映った上半身しか記憶にない。

俺をかわいがってる? とてもそんな風にはみえなかった。