ドンッ! 

背後からの爆発音。

その爆風に押され、足元がふらつく。

飯塚さんが助けてくれなかったら、確実に転倒していた。

到着した電車と、驚く乗客たち。

降りてくる人の波は火災に気つき、パニックを起こしている。

いづみはその混乱の最中、ホームと列車の間に飛び込んだ。

「避難してください! こちらです」

飯塚さんは駅員の制服を着ていた。

乗客を地上に案内している。

竹内はそんな俺に向かって端末を向ける。

これではスマホで火災現場を撮影している野次馬と見分けがつかない。

「つーか、いづみがホームに落ちた!」

「わんこチェックの結果は?」

「助けに行かなくていいのかよ!」

竹内は明らかにムッとした表情のまま、カメラをこちらに向けている。

「基本の『き』だ。ちゃんとやり方は教えた」

あっという間にホームから人の気配がなくなる。

小さな駅だ。

2両目の車両が大きくガタリと揺れた。

と、1両目と2両目の連結が外れる。

今度は竹内の手が俺を引いた。

その瞬間さらなる爆発音がして、俺のいたすぐ頭上の壁が外れる。

そこからドロリと漏れ出した液体は、異臭を放ちながらもゆっくりと動き始めた。

「バイオコントロールシステムか。これは厄介な相手だな」

飯塚さんはポケットから小瓶を取り出した。

その液体を動き続けるアメーバに振りかける。

鼻をつく強烈な匂いが辺りに立ちこめた。

その液体に触れ、アメーバの体はぐんぐんと溶けていく。

「どうしてわんこチェックをしない」

飯塚さんの手に、空気圧縮発射装置が見えた。

クロスした腕からそれを振り上げる。

エアカッターで一度切断されたはずのそれは、再びドロリと一つになった。

「今それどころじゃないだろ!」

飯塚さんの振りかけた液体から、まだ臭気が上がっている。

少しずつ溶けて小さくはなっているようだ。

電車に近寄ろうとするそれを、空気の壁で押し戻すようにして進行を防いでいる。

「さっさとやれ。基本を大事にしない奴は、何をやらせてもダメだ」

何だ? この臭い。

アメーバからの臭いに、イヤな予感しかしない。

俺は竹内に渡されたペン型空気環境検査装置の捕集管を開いた。