コンビニの朝は忙しい。

目覚ましと共に飛び起きると、俺は着替えもそこそこに家を飛び出す。

「ねぇ、ご飯はいらないの?」

「コンビニで食う」

ほんの半年前まで、家を出ることさえ希だった俺が、今は家族の中で誰よりも一番に出て行く。

「コンビニ店員がそんなに楽しいのぉ?」

起きてきたばかりの姉の嫌味を、珍しく父は牽制した。

「重人の性にあった仕事なら、なんだっていいんだよ」

「おうちでみんなでご飯食べるって約束だったじゃない!」

「今日の夜には帰れると思うから」

母の叫びを振り切った。

俺以外の3人には、自分そっくりに作られたアバターアンドロイドがいる。

他にも、首だけをすげ替えればいいように作られた、アルバイトロボも使われていた。

完璧にマニュアル化されたその行動様式が、そういったオモテの営業を可能にしている。

今朝はいづみだけが「本当に」働いていた。

「あ、おはようございます」

「おはよう」

「飯塚さんは?」

彼女の肌は真っ白なくせにつややかな光沢を帯びていて、人工樹脂の皮膚とも区別がつきにくい。

いづみは床にしゃがみ込んで、パンをきっちりと等間隔かつ寸分違わぬ同角度に並べていた。

画像をコピペで連続貼りしても、こんなにはきれいに並ばないだろう。

「今日は別のところへ行っているから。夕方には戻ってくると思うわ。あなたも早く着替えてらっしゃい」

立ち上がろうとした俺を押しのけるようにして、客の男が割り込んできた。

足は膝から下をピタリといづみの体に貼り付ける。

「おい、じゃまだ」

ぐいぐいと押しつけるその膝は、明らかに彼女の胸元を狙っていた。